all Reset 【完全版】
「……」
「お前と亜希なら……俺はいいと思ってるからさ」
そう言い残し、良平は振り返ることなく部屋から出ていった。
外で遠退いていく足音を聞きながら、俺はまたゆっくりと瞼を閉じた。
誰が誰を好きだとか、そんな話は三人の中には有り得ない。
でも、わかってる。
良平は亜希を想い、自分も同じだということ。
『亜希は、お前のこと好きだよ』
そう言った良平の言葉に、必要以上に驚くことはなかった。
それも、何となくわかってる。
ただ、良平の口から言われたことに息が詰まった。
良平の気持ちを知っていながら、余裕をかましている。
そんな自分もどこかにいたのかもしれない。
でも、今まで自分の気持ちに素直になろうとは思わなかった。
なれなかった。
この距離感でも構わない。
これ以上踏み込めば、何かが変わっていくのはわかっている。
人の気配が無くなった部屋で、俺は死んだように動かずにいた。