all Reset 【完全版】
熱を出した日
雨にびっしょり濡れたあの日の夜。
亜希は熱を出した。
熱を出したのは初めて。
きっと昔にあると思うけど、やっぱり憶えてない。
苦しくて、天井がグルグル回って見えてる。
もう何日も亜希はベッドの中にいる。
「亜希? 入るわよ?」
部屋のドアが開いて、お母さんが入ってきた。
「どう? まだ苦しい?」
「うん……頭が痛い」
「薬飲んでも一時的にしか下がらないわね……」
困った顔でお母さんがベッドに座った。
お母さんは一日に何回も部屋に来てくれる。
心配してご飯も部屋に運んでくれるし、薬も時間になると飲ませに来てくれる。
「はい、これ」
お母さんが亜希の手に何かを握らせた。