all Reset 【完全版】
「おばさんがさ、そんなこと言ってた。嬉しそうだったな~……おばさん」
秀がどんな顔でこの話を聞いてるのか振り向いて見てやりたい。
依然として秀は無言で、何の反応も見せなかった。
「なぁ、秀……お前さ、どうする?」
秀は、亜希の記憶が戻ることを願ってる。
菅野先生からそれを聞いたとき、忘れかけてたことを思い出した。
秀は……
やっぱり亜希が好き。
俺が亜希を想うように、秀だってそれは変わるわけない。
「……何をだよ」
ここまできて、知らん顔はさせない。
俺だって、それなりの覚悟を決めて今日ここに来た。
今日話に来ても認めないなら、秀を敵に回してでも諦めない。
そんな決心までしてきた俺の心は、どこか落ち着きを取り戻していた。
あの出来事が無ければ、密かに亜希を想ってるだけで俺の気持ちは収まってるはずだった。
亜希の気持ちと、秀の気持ちをそばで見守ってるだけ。
そのはずだった。
でも、そんな自分の立場がどっかで許せてなかったんだと思う。
いつかどうにかなる二人を、黙って見守る?
じゃあ、俺のこの気持ちはどうすりゃいいわけ?
完全に行き場を失った状態にひたすら耐える。
溜め込むだけ溜めて、捨てることもできない。
そこまで追い詰められても、俺の見込みない想いは負けなかった。
どうしようもないくらい、亜希を好きになってた。