all Reset 【完全版】
他の奴だったら、絶対負ける気なんかしない。
眼中にも無い。
でも、秀は違った。
亜希の気持ちを掴んだ秀は、別格。
俺が唯一、意識する相手だった。
友情より、愛情。
世間ではそんなことも言われる。
亜希が秀を好きでも、突っ走ることだってやろうと思えばできたかもしれない。
三人をぐちゃぐちゃにしても、突っ走れたかもしれない。
でも、二人を想えばできるわけもなかった。
二人が大事だから、できなかった。
秀がしらばっくれる理由も、何となくわかる。
俺の気持ちを知ってるから、踏み切れない。
俺が秀の立場なら、同じようにとぼけたと思う。
でも、もうそんなことしなくていい。
亜希が好きなのは、秀。
俺は……それを認めてる。
だからもう、誤魔化さないでほしい。
亜希は戻る。
昔の亜希に、戻る。
根拠はないけど、記憶は戻る気がする。
亜希にかかった魔法。
俺を想ってくれたその魔法は……
もうすぐ解ける……。
「もうさ……誤魔化すのやめようぜ?」
俺は秀にそう言った。