all Reset 【完全版】
終戦宣言
俺の前に立つ良平は、ため息混じりにそう言った。
さっきからずっと、俺の目は良平のジーンズのポケットを見ている。
何色もの糸で訳のわからない刺繍がごちゃごちゃされてる、そのデザインを見つめていた。
予告なしにいきなり現れた良平。
ずっしりと重い空気を持ち込んできたと思えば、やっぱりその通りだった。
今日会ったとき、良平は笑いの欠片も見せない真剣な顔をしていた。
何かを決意して、それは揺るがないって言わんばかりの面持ちだった。
誤魔化すのはやめよう?
とうとう……
宣戦布告しに来たってわけか……。
そう思うと、どう出たらいいか迷う自分が膨らんだ。
これ以上、良平が言うように誤魔化し続けることはできないと思う。
でも、この誤魔化しには立派な理由があった。
俺ら三人が一緒にいるっていう、大事な意味があった。
いつかは良平とこうなる。
どっちかが最悪な想いをする。
それもわかってた。
だからずっと、とぼけてきてたんだ。
「……誤魔化す気なんて、今更ねぇよ」
良平の勢いに負けて、俺はそう言っていた。