all Reset 【完全版】
黙りあって無音だった部屋にいつもの良平が現れた。
内心焦って目を向けると、良平の横顔は緊張から解き放たれたように落ち着きを払っていた。
コイツは何でこう……
いっつも突拍子がないんだろう……。
こんなときに俺はしみじみそんなことを思う。
ついでに、それはどういう意味なんだろうと考える。
でも、すぐに考えるのをやめていた。
何が楽しくてこんな話をしてる?
今までこうやって探り合ってきたけど、それ自体がこっけいなことに思えた。
「いつまでもこんな話しててさ、馬鹿くさくね?」
「……」
「とりあえず、言え。亜希に」
「……は?」
「ここまで世話焼かして、お前がまだはっきりできねーなら……」
そこまで一気に言って、良平は軽いため息をつく。
「俺はお前と縁を切る」
きっぱりとそう言った。
「それがどういう意味か……わかんだろ?」
“お前がはっきりしないなら、俺は諦めない”
俺が自然と悟ったのはそんな意味だった。
良平は、決着をつけようとしてる。
このどうしようもない守備ばかりの戦いを、今ここで、終わらそうとしてる。
それは誰のためでもなく、誰かのためなのかもしれない。