all Reset 【完全版】
「離れて? まさか、留学するとか言わねぇよな?」
「留学はしないけど、ちょっとこっから離れる。でも、ちゃんと考える……お前の気持ちだって、知ってんだからさ」
「あっそ。とにかく……俺に遠慮とかすんのはやめろ」
「……」
「そういうの、うぜぇから」
ばっさり切り落とす言葉を吐き、良平は立ち上がった。
これでこの話は終わり。
そんな言い方だった。
そして、今日初めて俺と目を合わせた。
「もし他の奴だったら、俺はこんなこと言わない。お前だから……言えたってこと」
今日初めて真っ正面から見た良平は、少しだけ笑ってそう言った。
それからすぐ、部屋を出て行った。
去って行く姿を見届け、俺は改めて思っていた。
良平は、やっぱり亜希が大事だということ。
“好きだ嫌いだ”みたいな小さな次元で、亜希を想っているわけじゃないということ。
それを改めて思い知らされた。
アイツは、良平は、俺にとって最強で最大のライバルだった。
話の決着を一方的につけてったけど、今だってそう思ってる。
素直じゃないけど、アイツはどこまでも亜希を想ってて、俺には太刀打ちできないところがたくさんある。
気を遣ってんのは……
お前だろ……?
俺がお前だったら、あんなこと言って笑って立ち去れるか、正直わからない。
今……
アイツはどんな気持ちなんだろう?
灰皿の上に、消されず燃え尽きた煙草が転がっていた。