all Reset 【完全版】
第八章 ココロとココロ
温かい結晶
良平と話してから、もう一週間が経とうとしている。
今にも白い粉が舞ってきそうな薄暗い空を、俺は人ごみから離れて見上げていた。
気が付けば、今年ももうすぐ終わりを迎える。
今日はクリスマスだった。
暖かく身支度した人々が、楽しそうに前を過ぎ去っていく。
その先には、レインボーブリッジが浮かぶ東京の海が広がっている。
どうしてここに来たのか、自分でもわからない。
最近、無自覚な行動が多すぎて俺は自分に呆れてたりもする。
決まった予定でもあるように家を出て、それからフラフラっとここにたどり着いていた。
『来年のクリスマスさぁ、もしわたしに彼氏いなかったら……秀がわたしと遊んでね?』
一年前、須田の相談をしてきたあの日、亜希が言った何気ない言葉。
喧騒から離れた、この小さなクリスマスツリーの前で待ち合わせ。
他愛も無い会話から生まれた、その場の流れような約束だった。
『予定入れちゃ駄目だからね』
って言ってみたかと思うと、
『でも秀に彼女ができてたら、そっちが優先かぁ……』
なんて、遠慮気味に笑ったりした。
コロコロ変わる表情が可愛くて、俺は返事もそこそこ亜希を見て笑っていた。
まだ、あれから一年しか経ってない。
たったの一年。
それなのに、ずいぶん昔のことに感じて仕方ない。
この一年、それだけ目まぐるしく過ぎ去っていった。