all Reset 【完全版】



良平に言った通り、年末には東京から離れようと思ってる。


毎年最低一回は顔を出せと口うるさく言う、静岡の親戚。親父の兄貴だ。


会社員をいきなり辞めて、思いのまま移り住んだ見知らぬ地で経営者を始めた伯父。


今では成功して、それなりな規模のペンションを経営している。


そんな豪快で自由奔放の伯父が、俺は結構好きだったりする。


毎年夏あたりに顔を見せに行くけど、今年は何だかんだでまだ一回も行けてなかった。



それをいいことに行ってみようと思ってる。


海でも眺めて、色々考える。


独りになって、全てをしっかり考えてみたい。



放浪を前に、今日ここに来てよかったと思えてきた。


亜希が隣にいなくても、少しだけ過去の思い出に浸れた。


それだけで何だか幸せな気分になれていた。



楽しそうにぴったりくっついて歩いていくカップルたちが絶えない。


眺めてると鼻に付くけど、不思議と穏やかな気分でいられた。


皮膚を切り裂くような冷たい風が吹き付け、一歩足を踏み出す。


周りの景色はキラキラ光輝いて、目に映る全てが懐かしかった。


この輝きを喜んだ、あの日の亜希を思い出した。







「秀くん!」



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