all Reset 【完全版】
「ちょっと、何それ」
「えぇ? だって、そう思うじゃないですかー。本当に悩んだんですから」
「ちょっと、冗談やめてよ」
「本当ですよ。うちの学年では噂でしたよ?」
そこまで言われて、わたしは自分でもわかるくらいの呆れ顔になっていた。
超心外……。
「うわさぁ? まったく……何言われてるかわかったもんじゃないな」
「みんな、噂とか好きですからね」
ふんふんと頷く尋乃ちゃん。
そんな尋乃ちゃんにわたしはわざと聞こえるような溜め息を吐いてみた。
「でもっ! そんなんじゃないってわかったから、話してくれたんでしょ?」
「あ、はい。良平先輩とは、本当に仲が良いだけなんだなって」
と言って、尋乃ちゃんはグラスを手に取る。
「亜希先輩は良平先輩じゃなくて、前田先輩が好きなんですよね?」
ニコっと微笑み、前触れもなくそんなことを口にした。
ピタリと瞬きが止まる。
ドキンと大きく鼓動が高鳴った。
え……え、え?
なっ……何…それ。
「だからこの前の話、サークルの先輩と付き合ってたっていう話、正直びっくりしたんですよ。だけど、やっぱり本命は前田先輩ってことですよね? だからすぐ別れたんですか? でもー、先輩たちお似合いですよ! 前田先輩って、うちの学年でも人気だったんですよ」
止まったままのわたしを置いて、尋乃ちゃんは一人トーク状態で盛り上がる。
ドクドク鳴りだした心臓に焦り、慌てて待ったをかけた。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
「え?」
「なっ、何で……何で秀なわけ?」
「え? だって先輩、前田先輩のこと好きなんですよね? わかりますよ、それぐらい」
尋乃ちゃんは笑いを堪えながらまた同じことを言う。
突然持ち上がった話に、わたしは頭の中が真っ白になっていた。