all Reset 【完全版】
訪れた母校はひっそりと静まり返っていた。
年明けの冬休みは部活に励む生徒の姿も無い。
職員用駐車場に車が数台停まってるのを見ると、日直の教師が何人か来てるくらいだと思えた。
本当にこの静かな場所に亜希が来てる?
そんな疑いを持ち始めていた。
言われた通り体育館に向かう。
開いてるわけ?
とか、どうでもいいことを思いながらすぐそばまで近付くと、聞き慣れた音が耳に入ってきた。
ダンダンと、ボールが床を跳ねる音。
高校時代、俺は毎日その音の中にいた。
どうすっかな……。
気持ち的にはまだまだ躊躇っている。
それなのに、俺の足は勝手に中に入って行く。
一発目……何て言う?
その問い掛けを内の自分にしたとき、俺はもう亜希の姿を目にしていた。
誰もいないだだっ広い体育館の真ん中に、独り立つ後ろ姿。
ビビッドピンクのダウンジャケットが目に強く映る。
掛ける言葉を探しながら、俺は恐る恐る足を進めた。
ひんやりとした冷たさが、靴下を通り抜けて足の裏に伝わる。
バッシュを履いてない俺の足音は、存在感がほとんど無いみたいに静かだった。
二十メートルほど接近したとき、ボールをつく音がぴたっと止まった。
気配を察知したように亜希が振り返る。
それとほぼ同時、手にしてたバスケットボールを突然投げてきた。