all Reset 【完全版】



その言葉に思わず訊き返そうとしていた。



戻った?

思い出した?

いつ?

何の拍子に?



でも、何も訊けなかった。


今、この瞬間、何が起こってるのか俺にはよくわからなかった。


わかりたくなかった。



さっきの電話が懐かしく感じたこと。


久々だったからとかじゃない。


ただ、それだけに気が付いた。





「わたしね……良ちゃんのこと……大好きだよ」



何だよ……

それ……。



そんなこと、言ってほしくなかった。



いつも一番近くにいても、一番遠くて届かない。


それでも、近くで見守ってたいと思えた。


何がそうさせたのか、理由はわからない。


でも、亜希の存在自体が、間違いなく俺を幸せにしてくれた。





大好きなんて……言うなよ。



それは……


俺には別れにしか聞こえない……。



俺から完全に卒業しちゃうみたいに……


そんな風に聞こえんだよ……。





「世話、掛け過ぎ。俺は……お前にうんざりなんだけど」





苦しすぎて心にもないことを言っていた。



俺にかかった魔法……それも解け始めてる。



でも、これで最後。


最後だから……許してほしい……。



消えかけた幸福の魔法。


それを使って俺は亜希を抱き締めた。



強く、優しく、抱き締めた。


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