all Reset 【完全版】
それで少しだけ正体がわかった。
同じ学年で、二つ隣のクラスの人。
良ちゃんとはバスケ繋がりだってこと。
先輩だと思ったのは、わたしの勝手な早とちりだったってこと。
このときから、わたしはすでに秀が気になってたんだと思う。
その日を境に顔見知りになったわけだけど、特にこれといって話すことは無かった。
クラスも違ったし、接触する理由がほとんど無かった。
話したと言えば、たまにうちのクラスにひょっこり顔を出して「アイツどこ行った?」って、良ちゃんの行方を訊かれる程度だった。
もっと話してみたい……。
そう思いつつ、このときのわたしには勇気が足りなかった。
そんな中、クラスの女子の会話で秀の名前が出てくることがちょくちょくあったりした。
『五組の前田くんってさぁ……』
その一部分が聞こえただけでわたしの耳は巨大化。
でも、続きの話は大抵ガーンとなることばっかりだった。
『彼女って三年の先輩でしょ?』
『彼女は大学生って聞いた』
とか、とにかく女ネタばっかりだった。
そのたびになぜかわたしは落ち込んだ。