all Reset 【完全版】
一番注目したのは秀の眼鏡だった。
授業を受けるとき、秀は必ずメタルフレームの眼鏡をかけていた。
それは授業中限定で、クラスが違ったわたしには初めて見る新鮮な顔だった。
最初のうちはそれが珍しく、わたしは眼鏡の秀をチラチラ見る癖までつく始末だった。
眼鏡をかけただけで、秀は物凄く知的に見えた。
顔の作りがいいって、何をしても似合うもんなんだなぁ……
なんて、感想を持つほどだった。
とにかく、授業中の暇潰しは秀を眺めることに費やされた。
特に好きだったのは、後ろの席から秀の背中を見てること。
夏の席替えで一番後ろの席になった時、あたしはシャツ越しに見える秀の肩胛骨にばかり目がいっていた。
わたしの黒板は秀の背中。
そんな自分に、
あたしって変態っぽい……。
なんて、軽く思ったりもした。
けど、秀を密かに見てる子はかなりいた。
“かなり”と言っても大袈裟じゃないくらい。
他の子がどこを見てるかは知らない。
でも上から下、秀はどこを見ても抜け目なかった。
さり気なくハイライトを入れたワックス仕上げの髪。
肩幅と長い腕。
机からはみ出しちゃうスラッと伸びた足。
わたしだって見てて飽きなかった。
見てるだけでドキドキさせられた。