all Reset 【完全版】


見てるだけのドキドキ。


それは誰でも自由に味わうことができる。


初めはわたしもそうだった。



でも、わたしのドキドキは日に日に形を変えていった。


秀と関わることで、単純なドキドキが深いドキドキへと変わっていった。



秀はいつも広い心でわたしを受け入れてくれた。


何かに悩んでるとき。

落ち込んでいるとき。


一番に気付いて訊いてくれるのは必ず秀だった。


顔にも出さない。

いつも通りの振る舞い。


それなのに、秀にはすぐ見破られた。



「何かあった?」


って、さり気なく訊かれた。



まるで、わたしの心の中を読み取れる力を持ってるみたいに……。


初めは不思議で戸惑った。


でも、気付けばそんな秀に心を許してた。


受け答えがしっかりしてて、物腰が柔らかくて、安心して話せる相手。


初めて逢ったとき年上と勘違いしたような、それと似た感覚だった。


真剣に話を聞いてくれて、自分のことのように一緒に考えてくれる。



そんな秀を、わたしはいつの間にか頼りにするようになっていた。



秀の優しさに甘えた。



秀がそばにいることは、わたしにとって安らぎで、心の陰なんか消える穏やかな明るい場所だった。


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