all Reset 【完全版】
出逢ったあの日、きっとあの日からわたしは秀を想ってる。
記憶が戻った今、はっきりと自覚してる。
秀を好きな気持ちは不安定で、いつも溢れそうになって、それを大切に、必死に守ってきた。
これが、誰かを想う気持ち。
恋だってことを、わたしは知った。
秀には、わたしなんか圏外だと思ってた。
綺麗で、大人で、そんな人しか興味無いって思ってた。
わたしみたいな子どもじゃ駄目だって、対象にもならないって、本気で思ってた。
それなのに……
今でも信じられない……。
クリスマスツリーの前で、少し恥ずかしそうに言ってくれたこと。
好きだったって、言ってくれたこと。
失くした記憶が戻ったら、また、言ってくれるって、あの日約束してくれたね……?
すごく……嬉しい。
嬉しくて幸せで、どうしたらいいかわからない。
今のわたしが、秀を想ってきた本物のわたしが、秀にそう言ってもらえたら……。
気付くと、見ている景色が歪んでた。
象の形をした滑り台がふにゃふにゃになって目に映る。
この涙は、何の涙だろ……?
変だな……
おかしいよ……。
きっと前には戻れないから、良ちゃんの気持ちを知ったから、わたしは素直に喜べないでいる。
泣けてくる。
あの事故の日から一気に飛んできたみたいなわたしは、一人だけ取り残されて、あの日のまま。
本当の気持ちを出せないでいる。
でも……もうそれじゃ駄目なんだ。
もう、隠してるのはわたし一人だけ……。
自分の気持ち。
本当の気持ち。
それに……素直に生きる。
生きなきゃ……
いけないんだ……。