all Reset 【完全版】
さり気なくその男のチェックもした。
三年の、元サッカー部。
まぁ、よくいる感じの普通の奴。
なんて知って、“大したことない”とか“余裕余裕”って自分に言い聞かせた。
かなり自己満の世界ってやつだった。
一応亜希の彼氏となったそいつは、たまに俺らの教室に顔を出しに来ることもあった。
教室の中を覗いて「亜希~」なんて呼び出す。
気安く呼びやがって……。
なんて、心の中で必死の抗議。
当時の俺は本当にどうしようもない馬鹿たれだった。
「顔、怖くなってますよ~?」
思わず顔に出てたらしく、良平にそんな突っ込みを入れられたこともあったくらい。
ちょうど一緒にいるときなんかに奴が現れると、亜希は少し困ったような顔で俺を見た。
何か言いたそうな顔をしながら渋々教室を出て行く。
そんなときは何も考えないで止めたい衝動に駆られた。
行かせることが切なかった。
でも馬鹿な俺は「行ってこいよ」なんて普通に言えていた。
気持ちと出てくる言葉が裏腹で、そんな自分にムカついた。
結局、亜希とその三年は年末には別れていた。
別れたと亜希が話してきたとき、俺は理由も訊かず「そっか」とだけ言った。
でももちろん、内心ほっとする自分がいた。