all Reset 【完全版】
「秀…くんは……どこにいるの?」
『静岡』
「静岡?! ぁ……静岡って、どうして?」
まずっ……。
中途半端にリアクションとっちゃった。
『ちょっと独り旅』
でも、不自然すぎるわたしの反応に秀は何も気付いてないみたいだった。
「そうなんだ……」
静岡って……。
たしか、秀の伯父さんが住んでるって聞いたことある。
一人で行ってるんだ……。
静岡なんてそんなに離れてない。
だけど、物凄く遠いところに行っちゃった気がする。
電話で声が聞けても……何か寂しい。
会いたいって思う。
会いたいよ……。
秀に、会いたい……。
『おーい、亜希?』
「……あっ、ごめんね」
心臓がびくんと跳ね上がった。
会いたい気持ち。
こんなに好きって気持ち。
今すぐ口に出して伝えたい。
でも、あとちょっと。
そのほんの少しの勇気がわたしには足りない。
勇気……なのかな?
恥ずかしいとか躊躇いじゃない。
きっと、好きなんて言葉じゃ片付けられない。
知らない間にこれだけ募らせた想い。
しっくりくる言葉が見つからない。
それは、この世にあるどんな言葉でも表せないのかもしれない。
口で簡単に言えないくらい、わたしは秀を想ってる。
まだ、誰も知らない言葉を探してる。
『で?』
「へっ?!」
『何かあったから電話してきたんじゃないの?』
「あ……」