all Reset 【完全版】



どうしよう……。



本当は大事な用がある。



全部……思い出したって……。


記憶戻ったよ、って……そう言いたくて電話した。



秀は……

それを聞いたらどう思う?


きっと……

すごく喜んでくれるよね?



あたしの記憶が戻ること、秀は待ってるって……言ってくれたもんね?



「……ううん、何でもないんだ」



気が付くとそう言っていた。



やっぱり……


言えない……。



一番知ってほしい人にわたしは言えないでいる。



「あ、じゃあ、いつ帰ってくるの?」


『え? 帰るのはたぶん明後日だと思うけど……何で?』


「えっ? あー……ううん、何でもないよ」



そればっか……。



何でもない何でもないって……


そればっか……。



『……何かさ』


「うん…」


『久しぶりに亜希の声聞いたら、会いたくなった』



秀の言葉で、顔がカァっと熱くなるのを感じた。


今、きっとわたしの顔は寒さに負けず真っ赤になってる。





秀……。


あたしもだよ。



秀に……会いたい……。


< 336 / 419 >

この作品をシェア

pagetop