all Reset 【完全版】



「うん。亜希もね……秀くんに会いたいよ」



ごめんね……。


ごめんね……秀……。



ほんとは、


昔のわたしなの……。



昔のわたしが……


秀に会いたいの……。



何もわからないふりして卑怯だけど、ほんとは本物のわたしが秀に会いたいの。



『じゃあ、帰ったら』


「うん……そうだね」


『また連絡するから』


「はい。わかりました」


『じゃ……』


「うん……」



秀の声が聞こえなくなる。


わたしはスマホを耳にあてたまま電話が切れるのを待った。



『……亜希?』


「ん?」


『亜希が切ってよ、先に』


「え?」


『何か……俺から切れないから』



もしかして……同じこと思ってる?


わたしだって、切れないよ……。


電話だけど、所詮電話かもしれないけど、今、この電話で秀の声が聞けてる。



だから、本当はきりたくない。



「じゃ、じゃあ、一緒にきろう?」


『え、何それ?』


わたしの発想がおかしかったのか秀は小さく笑う。


「せーの、って言うから。ね?」


『……あぁ、そういうことか』


「絶対きるんだよ?」


『わかった』


「きんなかったら怒るからね?」


『わかったよ』


「じゃ……せーのっ」




――。


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