all Reset 【完全版】
最終章 Dear……
わたしの好きな人
秀と話した日から二日はすぐに経った。
明後日。
そう思った日はもう今日になっていた。
いろいろ考えた。
でも、結局わたしが探す言葉は見つからない。
いまだもやもやした頭を抱えながらわたしは両手を出している。
「じゃあ、そのときいきなり全部思い出したって感じなんだ……」
ベースの透明なジェルを載せながら志乃さんが言う。
記憶が戻ってから初めてのネイルサロン。
志乃さんはわたしの話を聞いて、動揺を隠し切れてなかった。
でも、すぐに自分のことのように喜んでくれた。
月に二回くらいしか会わないのに、ただの客なのに、そんなわたしの話を聞いて目を潤ませてくれた。
記憶が戻ったことを喜んでくれる人がいること。
わたしはそれが本当に嬉しかった。
何ともなければ気付かないような大事なこと。
“周りの人の温かさ”
記憶を失って、それがよくわかった。
「でも……ほんとによかった」
志乃さんは相変わらずの微笑みを浮かべてそう言った。