all Reset 【完全版】
『とにかく、明日五時になったから』
「五時ね、わかった。授業は?」
『俺も秀も一限だけ。お前は?』
「わたしも明日は一限だけ…だったかな」
『そっか、じゃあちょうどいいじゃん。秀は終わったら車取りに実家に行くってさ』
「良ちゃんついてくの?」
『え、俺が行っちゃったら亜希一人になっちゃうじゃん?』
ぷっ…。
一応気を遣ってくれてるらしい。
でも明日、わたしには行くところがある。
「あー…うん、わたしは大丈夫。行くとこあるんだ」
『行くとこ?』
「うん。爪のお直し行くの」
片手をかざし、一ヵ月くらい前にやってもらったネイルを見つめる。
少し伸びてきていて、明日新しいデザインに変えようとサロンに予約を入れていた。
「でも大丈夫。五時までには終わるから」
『はー? 何だよ~、せっかく俺が時間潰し付き合ってやろうと思ってたのに』
丁重にお断りすると、良ちゃんは不貞腐れたような声でそう言った。
物の言い方は下手くそだけど、良ちゃんはそういうとこ優しいと思う。
あとは口だけ直せば文句ないってかんじ。
「ありがと」
そんな良ちゃんに素直にありがとうを言ってみる。
でもすぐに照れ臭くなった。
「あ、そうだ。時間あるならさ、それまで尋乃ちゃんと会ってれば?」