all Reset 【完全版】
「……さてと、今日はどうしましょうか?」
出そうだった涙が引っ込んだ頃、志乃さんは気を取り直すようにそう言った。
顔を上げてみると、デスクのライトに照らされた爪がキラキラと光っていた。
先端がオーロラのラメで、グラデーションになってるフレンチネイル。
ジェルコートをしてもらったら艶がすごく出ていた。
「うわぁ、超きれい……」
これだけでも十分って感じだった。
「アート、どうする?」
「……どうしよう」
今日は何も考えてこなかった。
こういうのがいいっていう希望も無かったりする。
「じゃあ……今日は志乃さんに任せます」
「え、そうなの? てっきり何か考えてきてると思った」
「そうなんですけど……何か、思いつかなくて」
思いつかなかったというか考えてる暇が無かった。
わたしの頭は今日のこと、秀に電話をかけることでいっぱいだった。
デザインを考えてくる余裕なんか全く無かった。
「わかった。じゃあ、お任せでね」
そう言った志乃さんはストーンの入ったボックスを何個も机の上に出してきた。
ピンセットで選ばれていくストーンは、大きさの異なるパステルカラーのものばかり。
汚いものを知らないような彩りに楽しい気分にさせられる。
大きなストーンからバランスよく並べて、その周りに小さなストーンを散りばめる。
賑やかになっていく指先にわたしは見とれていた。
「ねぇ……志乃さん」