all Reset 【完全版】



「……さてと、今日はどうしましょうか?」


出そうだった涙が引っ込んだ頃、志乃さんは気を取り直すようにそう言った。


顔を上げてみると、デスクのライトに照らされた爪がキラキラと光っていた。


先端がオーロラのラメで、グラデーションになってるフレンチネイル。


ジェルコートをしてもらったら艶がすごく出ていた。



「うわぁ、超きれい……」



これだけでも十分って感じだった。



「アート、どうする?」


「……どうしよう」



今日は何も考えてこなかった。


こういうのがいいっていう希望も無かったりする。



「じゃあ……今日は志乃さんに任せます」


「え、そうなの? てっきり何か考えてきてると思った」


「そうなんですけど……何か、思いつかなくて」



思いつかなかったというか考えてる暇が無かった。


わたしの頭は今日のこと、秀に電話をかけることでいっぱいだった。


デザインを考えてくる余裕なんか全く無かった。



「わかった。じゃあ、お任せでね」



そう言った志乃さんはストーンの入ったボックスを何個も机の上に出してきた。


ピンセットで選ばれていくストーンは、大きさの異なるパステルカラーのものばかり。


汚いものを知らないような彩りに楽しい気分にさせられる。


大きなストーンからバランスよく並べて、その周りに小さなストーンを散りばめる。


賑やかになっていく指先にわたしは見とれていた。



「ねぇ……志乃さん」


< 341 / 419 >

この作品をシェア

pagetop