all Reset 【完全版】
「どんな人なんですか? 聞いたことなかったけど」
いつも訊かれるばっかりで、志乃さんの彼の話は聞いたことがなかった。
「どんな人、かぁ……」
すごく気になった。
どんな気持ちになったら、結婚ってするんだろう?
同じ歳の友達でも結婚して子どもがいる子が何人もいる。
でも、わたしにとってそこまで行き着けることが物凄いことに感じられる。
「簡単に言えば……わたしが人生で一番好きになった人。でも、それじゃ簡単すぎるかな」
「簡単?」
「うん。何かさ……もっと違うことって気がする。今も見付からないけどね、最適な言葉が」
見つからない?
最適な言葉……?
それって……。
「……見付からなくても、大丈夫だったんですか?」
そんなことを訊くと、志乃さんはケラケラと笑い始めた。
自分でも訳のわからないことを訊いたと思った。
「大丈夫って、何だそりゃ」
「いや、何て言うか……」
……志乃さんは、その気持ちをどう伝えたの?
そう訊いてみたかった。
「じゃあ、もしだよ? 亜希ちゃんにそんな人がいたら、亜希ちゃんなら何て言う? その人が好きってこと」
訊きたいと思ったことを逆に訊かれた。
それは……わからない。
ずっと考えてるけど、何て言えばいいのかやっぱりわからない。
「……わからないですね。一言じゃ、まとまらないと思う」
「でしょ? それだよ」
「え……?」
「一言で言えちゃう好きって気持ちなんて、つまらないと思わない?」