all Reset 【完全版】
リアルのない世界
やっと見つけ出した亜希は、地面に携帯を落としたままマネキンのように動かなかった。
さっきの電話中、突然衝撃音が耳に響いた。
転がるスマホはそのとき落としたものだってすぐにわかった。
その直後、俺は策もないまま亜希を捜してここまでやって来た。
下手したら行き違いになったり、見つからなかった可能性の方が大だった。
でも、自分の行動を的確に判断できる力が俺にはなかった。
来いなんて言っても、自分で来れるわけがない。
見つけないと、大変なことになるかもしれない。
何より、亜希がどうかなる心配で頭がいっぱいになった。
見つかった安堵もつかの間、何を言ったらいいのかわからない自分と対面した。
俺はいまだ、パニックの中にいる。
「……亜希」
呼びかけた俺の声は消えかかっていた。
気付いているのかいないのか、亜希は完全に無反応だった。
「行こう……」
瞬きもしない亜希を見て、ただそれしか言えなかった。
「少し……遅くなるって」