all Reset 【完全版】
見たくないものばっか目に入った。
突き刺さったままの刃物。
救急隊員の必死の呼びかけ。
止まらない出血。
秀は反応しなかった。
見ている光景にリアルさが全くなかった。
秀の身元とか、状況とか、そんなようなことを訊かれても、俺の受け答えはしっかりしてなかった。
ただ、秀を見つめていた。
意識のない秀の手には、見覚えのあるノートが握り締められていた。
亜希とやっていた交換日記のノート。
きっと、これを亜希に……。
昏睡状態でもノートを離そうとしないその手を、俺は両手で包み込んだ。
握った手は、生温かかった。