all Reset 【完全版】
救急車が病院に着くと、秀は待ち構えていた病院の人間たちに引き渡され運ばれていった。
あっという間に緊急治療室に吸い込まれて、俺は扉の前に取り残された。
よくドラマとかで見る“手術中”って赤い電灯がついて、それを無の境地で見つめていた。
どのくらいその一点を見てたかはわからない。
でも、それが消えるまでの時間は大して長くなかったと思う。
しばらくして、突っ立つ俺の目の前で扉が開いた。
落とした視線の先からは、パタパタと何人かの看護師が俺を素通りして走り去っていった。
それから少しして、再び開いた扉の先に一人の医者が現れた。
落ち着いた足取りで目の前までやってきた医者に、俺は金縛りにあったように動けなくされた。
普通に訊こうと思ってた。
『どのくらいで退院できますか?』
でも、何も訊けなかった。
無表情な顔をピクリとも変えない医者を見て、秀に刺さった刃物が生々しく頭に蘇った。
まさか……。
有り得ない……。
そんなはずない……。
大丈夫……。
そう思って医者の顔だけを見てた。