all Reset 【完全版】
立つこともできなくなった亜希を連れて、待たせてたタクシーで病院に向かった。
平和にランニングをかましてた俺に持ち金なんかもちろん無く、病院に着いてまたタクシーを待たせた。
後で払う、そう言って先に亜希を降ろした。
尋常じゃない俺らの空気を察したのか、運転手のおっさんは文句一つ言わなかった。
歩こうとしない亜希の肩を抱えて病院に入ると、受付の中にいた看護師が俺を見て手元の作業を止めた。
表情一つない顔をして駆け寄ってくる。
「前田さん、移ったので……」
そう言って、案内するように俺らの前を歩いていく。
亜希は病院に入って、一度枯らせた涙をまた流し始めた。
これは……現実なのか?
俺はまた、自分に疑問を投げかけていた。