all Reset 【完全版】
それから、時間は淡々と流れていった。
たぶん、亜希を連れて病院に戻ってから三時間以上が経ってると思われた。
秀を見ることを拒む亜希を、俺にはどうすることもできなかった。
壁一枚向こうには秀がいる。
でも、亜希にその壁は分厚すぎるようだった。
廊下の長椅子に座ったまま動かない亜希は、いつからか平然とした顔をしていた。
平然……じゃない。
正しく言うなら、魂が抜けてしまったような感じ。
そんな顔だった。
秀の家族が病院の人間たちに呼ばれ、俺たちは静まり返った廊下に二人きりになった。
亜希が椅子から立ち上がったのは、それからすぐのことだった。