all Reset 【完全版】
本当に……生きてないのか?
そう思えるくらい、秀は自然な表情だった。
苦しんだはずなのにそれも感じさせない。
そんな安らかな顔をしていた。
俺らは目を逸らすことなくその顔を見ていた。
黙ったまま、ただ見つめていた。
「秀……わたし……ずっと、ずっと待ってたんだよ?」
眠るような秀のすぐそばに立って、亜希はそう話しかけた。
どんな想いで亜希は秀の姿を目に映しているのか、俺にはわからない。
でもきっと、秀がもう目を開けないなんて思えないと思う。
「神様は……平等じゃないね。ううん……神様なんていないんだね」
神様なんて……いない。
亜希のその呟きは静かな部屋に恐ろしく響いた。
「どうして……秀なの? こんなにたくさん人間、いるのに……どうして…どうして秀じゃなきゃいけないの?」
どうして、秀なのか……。
亜希の口から出たそんな疑問は、俺にも全く同感だった。
世界中にこれだけ人間がいて、毎日どこかで生と死がある。
この瞬間だって、それが起こってる。
それはわかる。
でもどうして今、秀が死ぬ?
何のために、秀が死ぬ?
もしその順番があるとしたら、それは絶対に狂ってる。
亜希が言うように、神様なんていない。