all Reset 【完全版】
「ねぇ、秀……やだよ。どうして……ねぇ」
数時間前まで、こんなことになるなんて誰一人思うはずもなかった。
亜希は秀と、普通に会うはずだった。
普通に会って、きっと二人は……。
そう思うと耐え切れなくなった。
込み上げてくる感情に唇をギュっと結び、流れ落ちそうな涙をせき止めるように天井に顔を向けた。
頼むから……秀を……
秀を帰してくれ……。
本気でそう願った。
亜希は膝をがくっと下ろし、ベッドに顔を伏せて泣き始めた。
そんな亜希を見て、せき止め切れなかった涙が一粒落ちた。
歯を食いしばり、手の平で拭う。
現実を受け入れた証拠のような涙を、俺は認めたくはなかった。
見つめる光景の先で、ふわふわと立ち上る線香の煙に目がいった。
その視界の中で、ある物に目が留まった。
「亜希……あれ……」
嗚咽を漏らし続ける亜希に、俺は思わず声をかけた。