all Reset 【完全版】



フィクションのような出来事が一気に起こっても、世の中は休まず回る。



本当は今年、俺たちは成人式だった。



でも、そんなことは一瞬にして無関係の行事になった。



二十歳を祝う、人生に一度だけの行事。



それも、秀がいなくなったことには勝てるはずもなかった。





あの日以降、俺は毎日必ず亜希のそばにいた。



部屋から出なくなった亜希は、世の中を遮断するように外を見なくなった。



一緒にいてもほとんど会話はなし。



秀がいなくなったことで、亜希が持っていた豊かな表情は消えてしまった。




生きることを、やめようなんて考えてないか?


秀を追って…とか……。



そんな最悪なことすら予測させた。



そう思わせるくらい、亜希の生気は失われてしまった。




俺にだって、秀を亡くしたことは頭がどうかしそうなことだった。



でも、亜希はそれを遥かに超えているはず。



俺には想像もつかない絶望感の中にどっぷり浸かって、出てこれなくなっている。


< 396 / 419 >

この作品をシェア

pagetop