all Reset 【完全版】
フィクションのような出来事が一気に起こっても、世の中は休まず回る。
本当は今年、俺たちは成人式だった。
でも、そんなことは一瞬にして無関係の行事になった。
二十歳を祝う、人生に一度だけの行事。
それも、秀がいなくなったことには勝てるはずもなかった。
あの日以降、俺は毎日必ず亜希のそばにいた。
部屋から出なくなった亜希は、世の中を遮断するように外を見なくなった。
一緒にいてもほとんど会話はなし。
秀がいなくなったことで、亜希が持っていた豊かな表情は消えてしまった。
生きることを、やめようなんて考えてないか?
秀を追って…とか……。
そんな最悪なことすら予測させた。
そう思わせるくらい、亜希の生気は失われてしまった。
俺にだって、秀を亡くしたことは頭がどうかしそうなことだった。
でも、亜希はそれを遥かに超えているはず。
俺には想像もつかない絶望感の中にどっぷり浸かって、出てこれなくなっている。