all Reset 【完全版】
目にしたのは、こっちを気にして何かを話している女子学生二人。
それと、良平の例の彼女だった。
俺だけじゃなく、亜希も良平も気付いたらしい。
三人して見ている先は同じだった。
面倒なことになりそうだと思った。
確実に例の彼女とその連れがこっちに来る。
そう読めた。
それを察したと同時、俺は席を立ち上がっていた。
騒がしいのは性分に合わない。
昔から女が集まって騒いでるのには関わりたくなかったし、好きじゃない。
亜希も例の彼女が来るのを察知したのか、良平の目の前のトレーを引き戻した。
幼なじみ、仲がいい、といっても『彼女』という立場の相手が見たら気を良くはしない。
そういう部分、亜希なりの配慮なのかもしれない。
「何だよお前ら、二人して行っちゃうわけ?」
取り残されそうになっている良平が、戸惑うように亜希と俺を交互に見上げる。
「こんにちわ~!」
そうこうしてるうちに例の彼女が来てしまった。
いつものように笑顔を振りまき、テーブルの上に手荷物を乗せる。
その後ろには愛想の良さそうな顔をした二人の連れ。
まだ女子高生が抜け切らない雰囲気を漂わせていた。
「亜希先輩、もう行っちゃうんですか?」
「あ、うん。ちょっと行くところあるんだ」
横にいる亜希は「ごゆっくり」と微笑む。
俺も便乗しよう……。
そう思いながら椅子を戻したとき、彼女の視線が俺に向けられた。
「あれ、前田先輩もですか?」
彼女はやっぱりニコニコ顔で小首を傾げる。
適当に答えようとしたそのとき、いきなり亜希に思いっきり腕を引っ張られた。