all Reset 【完全版】



ふと目を落とした先で、秀の書いた一文に目が留まった。



『いつも俺のそばで笑ってて下さい』



気が付くと何度もその行を読み返していた。




いつか、秀が言ってくれた。



「亜希は笑ってるのが一番似合ってる」



そう言ってくれたのが嬉しくて、わたしはいつでも笑顔でいた。



ううん……。


自然と笑顔で、いられたんだ……。



秀が言ってくれた、わたしの一番の顔。




それを今……


あたしは忘れてる……。






『いつも俺のそばで笑ってて下さい』






その文字が心の奥に沁みていく。



生きてるみたいに、秀がそう言ってくれてるみたいに、わたしの中に沁み渡っていく。





秀……。





わたしはしばらくその文字を見つめ続けた。



涙を乾かすように目をしっかり開いて、見続けた。





「……良ちゃん」



突然振り向かれて、良ちゃんはリアクションに困ったような顔をしていた。




「一緒に……来てほしいとこがあるの」




ノートと一緒にもらったハガキを手に、椅子から立ち上がった。


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