all Reset 【完全版】
「なぁ、どこ行くの?」
事情を知らない良ちゃんはここに来てやっとそう訊いた。
駅まで行って、勝手に二人分の切符を買って、説明なしに電車に乗り込んだ。
黙って付いて来てくれてたけど、さすがにわたしの突然の行動は読めないみたいだった。
三月が近付いた原宿の街は、少し軽くなった装いの若者たちで賑わっていた。
「秀とね……来たんだ。秋くらいだったかな」
ちょうど、落ち葉がひらひら舞う頃だった。
まだ半年しか経たないけど、この道を秀と二人で歩いたことが懐かしく感じる。
秀が今もそばにいれば、きっと懐かしいなんて感じなかった。
そんなこともあったね。
きっとそれだけで済んじゃったと思う。
「これ……」
バッグにしまい込んだハガキを取り出し、そっと良ちゃんに差し出す。
「そのとき、一緒に見たんだよね……わたしの誕生石の、ピアス」
卵型の誕生石に羽がついた小さなピアス。
十二色ある誕生石で、南国の海水みたいに透き通る水色の石。
そのアクアマリンがわたしの誕生石だって、秀はあの日教えてくれた。
「……秀の部屋にそれが届いてたからって、おばさんが」