all Reset 【完全版】



「なぁ、どこ行くの?」



事情を知らない良ちゃんはここに来てやっとそう訊いた。


駅まで行って、勝手に二人分の切符を買って、説明なしに電車に乗り込んだ。


黙って付いて来てくれてたけど、さすがにわたしの突然の行動は読めないみたいだった。



三月が近付いた原宿の街は、少し軽くなった装いの若者たちで賑わっていた。



「秀とね……来たんだ。秋くらいだったかな」



ちょうど、落ち葉がひらひら舞う頃だった。



まだ半年しか経たないけど、この道を秀と二人で歩いたことが懐かしく感じる。



秀が今もそばにいれば、きっと懐かしいなんて感じなかった。



そんなこともあったね。


きっとそれだけで済んじゃったと思う。



「これ……」



バッグにしまい込んだハガキを取り出し、そっと良ちゃんに差し出す。



「そのとき、一緒に見たんだよね……わたしの誕生石の、ピアス」



卵型の誕生石に羽がついた小さなピアス。


十二色ある誕生石で、南国の海水みたいに透き通る水色の石。


そのアクアマリンがわたしの誕生石だって、秀はあの日教えてくれた。



「……秀の部屋にそれが届いてたからって、おばさんが」


< 407 / 419 >

この作品をシェア

pagetop