all Reset 【完全版】
「秀は残って」
良平と彼女たちに背を向けるように引っ張られ、亜希はこそっとそう囁いた。
何かと思えばそんなことを言い出す。
「え? 何で」
つられて俺も小声になる。
「何でも」
「え、意味わかんないけど」
「別に意味とか無いけど、とにかく!」
背後の四人を気にしながら亜希は話をまとめようとする。
「ダメなんだよ、こういう状態」
心から勘弁してくれって心境で俺は言い返した。
亜希だって俺の苦手なものくらい承知なはず。
でも……。
「とにかく、お願い!」
なぜか今日の亜希は頑固だった。
一歩も引こうとしない。
「良ちゃん、間がもたなそうだしさ。すぐ帰ってもいいから」
半ば強引に話をまとめ、亜希はサッとバッグを掴む。
バイバイと手を振り、そそくさと一人立ち去ってしまった。
おいおい…
冗談だろ……?
置き去りにされた俺は、仕方なく戻した椅子を引くしかなかった。