all Reset 【完全版】
えっ……。
なっ、何?!
ビックリして秀を見上げる。
緊張してる心臓の音、気付かれるかも……。
手を握られたまま思わず立ち止まってしまう。
「……どう、したの?」
なるべく、普通に。
そう思いながら訊く。
「見せて?」
秀はほんのり笑みを浮かべ、何の緊張もない顔でわたしを見下ろした。
このドキドキ……やっぱり気付いちゃったの?
だから笑ってるの?!
「え? な、何を?」
「爪、やってきたんだろ?」
そう言った秀の手が、わたしの左手も掴み取る。
両手と両手が繋がれて、心臓が一気に跳ね上がった。
やだ……ば、バレちゃう!
ドキドキしてんのバレちゃうよ!
繋いだ手から心臓の音が電流みたいに流れて、秀に伝わっちゃってるかもしれない。
そう思うと、走って逃げたいくらい恥ずかしさが増していった。
「暗いから……見えないよ」
「だいじょぶ、こうすれば」
そう言った秀は、左手でわたしの両手を掴んだままスマホを取り出す。
光った画面が真新しい爪を浮かび上がらせた。
「へぇ……今回も凝ってるじゃん。何か亜希っぽいな?」
それだけを言って、秀はわたしの手をそっと放した。
秀のぬくもりが手の中に残る。
「行くか、良平んとこ」
「あ、うん、そだね」
秀の後ろに続き、わたしは高鳴る心臓を必死に落ち着かせた。
……気付いた?
この爪に印した、今日の日。
秀に……初めて会った日。
わたしのドキドキに……
気付いた……?
秀はきっと……
わたしにドキドキしたりしないんだろうね?
何かちょっと、
悔しいよ……。
わたしばっかり……こんな気持ちになるんだ……。