all Reset 【完全版】
今……何が起こっているのか。
一体……何がどうなってしまったのか。
俺の頭はおかしくなりそうだった。
考えても何もわからない。
計り知れない不安と焦燥感。
その塊に押し潰されそうで、自分がわからなくなりかけている。
頭の中でガンガンと何かが鳴り響き、さっきから耳鳴りが止まらない。
向かいの椅子には、今さっき駆け付けた亜希のおばさんがぐったりと座り込んでいる。
生気を失ったような…脱け殻みたいな姿をして……。
おばさんは亜希が検査に入ってから病院にやって来た。
仙台から慌てて来たのだろう。
いつもの洗練された美しさが欠けていた。
俺はおばさんと顔を合わせた瞬間、深々と頭を下げて何度も謝っていた。
無意識にそうしていた。
でもおばさんは「あの子は大丈夫だから」と、努めて弱々しくも微笑んだ。
俺を責めることをしなかった。
おばさんのその気遣いが、俺を余計に苦しめた。
やり場のない気持ちが、自分の内に溜まっていく。
俺が……
ハンドルを握っていた……。
俺が……
亜希を……。
静かな病院の廊下で、俺たちは時間なんてないみたいに動かなかった。
「白石さん、お入りください」
扉が開き、さっきの看護師が顔を覗かせた。
これから突き付けられる現実から、俺は逃亡したい気分だった。