all Reset 【完全版】
切り取られた過去
結果が……出たらしい。
看護師が顔を出したとき、向かい側に座るおばさんの顔が強ばった。
目が合うと、おばさんは何かを訴えるみたいな顔をした。
そして……。
「二人共……一緒に聞いてくれるかしら?」
おばさんはそう言った。
きっと、一人で聞くのが不安なんだと思う。
俺だって怖い。
秀も同じだと思う。
あの時の亜希を見て、今までにないような不安を感じた。
あんな亜希、今まで見たことない。
何かに怯えているような、口では言い表わせない姿だった。
あの様子は尋常じゃない。
亜希の身に何が起こっているのか全く想像がつかない。
おばさんが立ち上がって診察室に入っていく。
俺も後に続こうと腰を上げた。
「おい…秀」
検査を待つ間、秀はぴくりとも動かなかった。
膝の上で拳を握ったまま、自分の足元だけを見ていた。
未だに同じ体勢で動こうとしない。
おばさんに会ったときの秀は、責任を全部背負い込んだみたいに謝っていた。
無理もないかもしれない。
でも……これは夢じゃない。
何を言われても…現実として受け止めるしかない……。
「行くぞ」
俺は秀に声を掛け診察室に向かった。