all Reset 【完全版】
戻せない時間
気付けばほとんど無意識のうちに病院の外まで出て来ていた。
今頃になって足の痛みを感じる。
それすら紛れるくらい、俺は動揺している。
「おい、秀!」
良平に呼び止められ足を止めた。
「どこ行くんだよ……」
でも、すぐ背後まで迫られても振り返れない。
答えることもできない。
一気に起こった全てのことに、未だ、理解も納得もできない。
ただわかったことは……
自分が起こした事故で亜希が記憶を失ったということ。
それだけだった。
「急に出てくから焦ったし」
何事も無かったような良平の口調に苛立ちを感じ始める。
「……大丈夫か?」
いつになく落ち着いた静かな声が背中を突き刺した。
生暖かい風が吹き付ける。
心地のいいはずの風も、顔に髪を貼りつけるだけの煩わしいものにしか感じられなかった。
「これからのこと……前向きに考えるしかないよな?」
良平なりの気遣い。
それは瞬時にわかることだった。
不安な気持ちを堪えて、そう言うのが精一杯なのもわかる。
でも、前向きなんて……
どうしたって考えられない。
俺は……
事故を起こした張本人だ。