all Reset 【完全版】
思い出に独り
薄暗い病室。
ベッド脇にある小さな照明が、眠る亜希の顔を柔らかく包んでいる。
診察室に戻ったとき、俺はおばさんに声を掛けれなかった。
あんなおばさんを見たら何も言えない。
完全に生気を吸い取られて、憔悴しきっていた。
まるで、くたびれた人形みたいに……。
「今日は、ゆっくり休んでください」
そう言うのが精一杯だった。
あれから、秀の行方はわからない。
連絡も取ってない。
あのまま戻ってくることはなかった。
少し……後悔してる。
思いやりのかけた、突き放すような言い方をした。
アイツは……秀は……
一番責任を感じてる。
運転をしていた自分を責めて、悔やんで、どうしようもないんだと思う。
でも、あのときの俺は悲観的な秀を許せなかった。
前向きに……。
確かにそう言ったものの、正直、秀が言うように前向きに考えるなんて難しい。
でも、口に出してそう言わないと、押し寄せてきた何かに負けそうだった。
今、目の前にある……現実に。
それに負ければ全ては崩れていく。
俺はそれだけは嫌だった。