all Reset 【完全版】
ベッド脇の椅子に座り、俺はしばらく亜希を見つめていた。
何が……違うんだ?
目も、鼻も、口も、
俺にはいつもの亜希にしか見えない。
今は眠ってて、起きたら……
「良ちゃんの馬鹿」
とか言って、寝顔を見られたことに怒って……
そんな気がする。
いつもみたいに俺を小馬鹿にして……
同じように笑って……。
……違うのか?
目を開けても……
お前には俺がわからない?
お前の目に……
俺はどう映る?
見えた世界は……
今までと違うのか?
亜希の声が聞こえる気がする。
耳の奥で、頭の中で、心のどこかで……。
「良ちゃん」
目を覚ましたお前は……
もう……
そう呼んでくれないのか?
記憶にも残らないくらい前から、俺は亜希と一緒にいた。
それなのに、思い出したいことが出てこない。
走馬灯のように、なんて都合よく、俺には思い出のハイライトは上映されない。
こういうときって今までのことが駆け巡ったり……
そういうもんだとばっかり思ってた……。