all Reset 【完全版】
絵本をベッドに置いた亜希が、とぼとぼと俺の目の前にやって来る。
何を思ったのか、亜希は俺の手を取った。
俺の手が熱いのか、亜希の手はやたらと冷たく感じた。
「……行っちゃうの?」
純真無垢な、澄んだ瞳。
亜希の目に映る自分を見つめながら困惑が広がる。
少しでも何かを感じてそう言ったのか、男のくせにそんな淡い期待すらしてしまう自分がいた。
深い意味なんてない。
思ったことを、
感じたことを、
ストレートに口に出す。
今の亜希は、単純な感情でものを言うんだ……。
「また……来るからさ」
そっと手を離し、俺は病室を後にした。
振り返ることはできなかった。