all Reset 【完全版】
「言うわけねぇだろ……」
「だよな……そうだよな……」
「馬鹿か、お前は」
そんなこと絶対に認められるわけがない。
突き放す口調でそう答えると、良平はへらっと笑う。
「俺も今思った」と、苦笑いをみせた。
「ただの事故入院。それで通すしかないだろ」
「あぁ、だな。それが一番いいと思う。でも、精神的にってのが厄介だな。記憶がないって話までいってないんだろ?」
「……たぶんな」
噂というものは恐ろしいものだ。
場合によっては人の勝手な憶測で、有りもしない話にまで発展する。
でも今一番恐ろしいのは、真実に近い噂が出始めていることだと俺は思っていた。
やっぱり、世間は狭い。
「でも……時間の問題かもな。わかんねぇけど」
時間の問題。
それは、良平にも注意を促すための警告のようなものだった。
一生懸命に否定することもできない事実。
でも、真実を軽々しく話したくはない。
いずれはわかってしまうことなのかもしれない。
だけど……今はどうすることもできない。