all Reset 【完全版】



「言うわけねぇだろ……」


「だよな……そうだよな……」


「馬鹿か、お前は」



そんなこと絶対に認められるわけがない。


突き放す口調でそう答えると、良平はへらっと笑う。


「俺も今思った」と、苦笑いをみせた。



「ただの事故入院。それで通すしかないだろ」


「あぁ、だな。それが一番いいと思う。でも、精神的にってのが厄介だな。記憶がないって話までいってないんだろ?」


「……たぶんな」



噂というものは恐ろしいものだ。


場合によっては人の勝手な憶測で、有りもしない話にまで発展する。



でも今一番恐ろしいのは、真実に近い噂が出始めていることだと俺は思っていた。



やっぱり、世間は狭い。



「でも……時間の問題かもな。わかんねぇけど」



時間の問題。


それは、良平にも注意を促すための警告のようなものだった。



一生懸命に否定することもできない事実。


でも、真実を軽々しく話したくはない。


いずれはわかってしまうことなのかもしれない。


だけど……今はどうすることもできない。


< 82 / 419 >

この作品をシェア

pagetop