all Reset 【完全版】
歌舞伎町にあるカラオケ店に俺らは入った。
尋乃は電子リモコンの曲目リストを見ると、新譜から曲を選んで一人歌い始めていた。
「先輩、歌ってくださいよ」
なんて始めは言ってたけど、歌う気がさらさら無い俺に諦めたようだった。
この調子だと、軽く二時間は一人で歌ってる。
そんなことを思いながら、尋乃の甲高い歌声を耳に、俺はいつの間にか座ったまま眠りに入っていた。
意識が戻ったのは、尋乃が耳元で歌っている。
そんな状況の中だった。
頭もスッキリしちゃってるし、目覚めはかなりバッチリ。
随分熟睡した気がした。
そんなスッキリしちゃってる俺の首には、密着した尋乃の腕が絡み付いていた。
甘い香水の香り。
ヒールの靴は脱ぎ捨てられ、寝ていた俺の横で立て膝なんかしてる。
付き合って日が浅いのもあるけど、尋乃と俺にはよそよそしい空気がいつも流れていた。
一緒に歩いてても、手すら繋がない。
もちろん、それ以上の関係にもなってない。
尋乃の方も遠慮がちだし、俺の方も何となく……。
そんなわけで、関係は発展していなかった。
だから、こんなに近距離まで接近したのはこのときが初めてだった。
その行動の原因はすぐに判明した。