all Reset 【完全版】
無造作に置かれた歌本と、もう一本のマイク。
それを取り囲む半端ない数のグラス……。
テーブルの上は大変なことになっていた。
酒、か……。
未成年で、そもそも酒なんか強くもないくせに、どうやら俺が寝てる隙に大量の酒を飲んでたらしい。
どうりでテンションが高いわけだ……。
どのくらいの時間が経ったのか何となく腕時計を見てみる。
瞬間、ぎょっとした。
はっ……?
に、二時?!
絡む尋乃から慌てて離れ、無駄に立ち上がる。
目を疑ってもう一度時計に見入った。
間違いじゃない……。
一気に熟睡の夢心地から覚まされる。
呆然としていると、後ろから酔っ払った尋乃が抱きついてきた。
「せんぱ~い、終電行っちゃいましたね?」
語尾にハートマークでも付けたような言い方をする尋乃。
何考えてんだ?!
カチンときて、俺は振り払うようにして尋乃に振り返った。
「何で起こさなかったんだよ?!」
でも……。
「きゃー、先輩こわ~い」
全く効き目が無し。
きょとんとして、すぐににやっと笑う。
完全に出来上がってる……。
「せんぱぁ~い、怒ってるんですかぁ~? 私と一緒なの、嫌なんですかぁ~?」
そういう問題じゃないだろ……。
論点ずれしている尋乃を相手にしている場合じゃない。
とりあえず……どうするか。
それを考えるのに精一杯だった。
「始発出るまで、ここにいるしかないか……」
それしか考えられない。
朝までカラオケの個室の中……。
考えただけでも、どっと疲れそうだった。