all Reset 【完全版】
「えー! 朝までこんなとこにいるんですかぁ?」
おいおい……
君が行きたいって言ったんだよ?
自分で行こうと誘っておいて、最終的には“こんなとこ”呼ばわり。
尋乃は何が不服なのか横で大騒ぎを始める。
「……しょうがないだろ」
もう相手にしてらんない。
俺はそのまま、カラオケ店独特の長椅子に寝そべった。
このまま朝まで寝てればいい。
そんなことを思いながら目をつぶった。
が……。
「もっしも~し、亜希先輩?!」
……は? あっ、亜希?!
思わずガバッと起き上がる。
尋乃がスマホを片手に部屋中を歩き回っていた。
電話の相手は、
亜希らしい……。
まっ、まずい……それはまずいだろ?!
終電を逃して帰れなくなったなんて知られたら、何を言われるかわかったもんじゃない。
変な汗が出てくる。
「作戦、成功しちゃいましたぁ~」
は? 作戦……?
「はい、良平先輩と朝帰り、してきまぁ~す!」
酒も手伝い、尋乃は脳天気にそう言った。
……はい?
朝、帰り……?
何だそりゃ。
その言葉にあらゆる意味が含まれてるなんて、このときの俺は知る由もなかった。