all Reset 【完全版】



「んじゃ、おやすみなさ~い」


最後にそう言って尋乃は通話を切る。


「それ……どういうこと?」


何からどう訊けばいいかもわからず、俺は漠然とした質問をしていた。


まさか、また亜希がいらないお節介を焼いたかもしれない。


そんなことを思いながら……。



「終電逃して、良平先輩と朝帰りしちゃえって、亜希先輩が」



……予感は的中だったらしい。


亜希の奴……一体何考えてんだよ?!



そう思ったものの、一瞬で思い直していた。



アイツは、何も考えてないんだ……。


いや、何も考えてないと言うより、これは全て俺のため……みたいな。



お節介を焼かれてると思っているのは自分だけ。


亜希自身はむしろ、素直な気持ちで応援してるだけ。


悪気があってしてるんじゃない。


そうわかった途端、俺は尋乃と付き合ったことをこれまでにないくらい後悔した。


あのとき、亜希に文句をつけられようと付き合わなければ、こんなことにはならなかった。


付き合ったことで、それなりに気が有るとか、満更でもないとか思われるのは当たり前のことだ。


でも、そう思ったとこで納得がいく問題じゃなかった。



亜希は、何もわかっちゃいない。


こっちの気持ちも……何も……。



その想いが、複雑な何かに対する怒りと混じり合う。


テーブルに放っておいたスマホを手にし、俺は部屋を出ていった。


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