all Reset 【完全版】
数時間後には日が昇り、眩しいほどの太陽が顔を見せていた。
カラスがゴミをあさっているのを横目に、ぼやぼやと新宿駅を目指す。
後悔……なんて言葉も出てこないくらい、そのときは頭が働いてなかった。
ほぼ一睡もしていない。
隣を歩く尋乃は幸せそうな顔で俺の手をしっかりと握っていた。
「怒ってますか?」
こっちの様子を窺うような声に目を向けると、尋乃はそれなりに昨日の自分を反省しているような顔をしていた。
怒る気力も無ければもう後の祭だと思い、俺は軽く首を横に振ってみる。
すると、尋乃は俯いて「私、不安だったんです……」と小さく呟いた。
「良平先輩は私のこと、彼女だって思ってくれてるのかな? って……」
亜希が昨日、電話で言ってたこと……。
会話の流れを思い出しながら、その後の自分の行動を自然と振り返ってしまう。
「でも、これでちゃんと先輩の彼女になれた気がします」
尋乃は満足気にそう言うと、引き寄せるように腕にしがみついた。
冷静になって考えられたのは、家に帰って死んだように寝て、夕方目が覚めたときだった。
何やってんだ? 俺……。
そう思った。
その翌日は大学に行かなかった。
鏡を見て、完璧に行く気を失った。
自分のげっそりした顔と、首に残る行為の痕跡。
絶対に行けない。
瞬時にそう思った。