all Reset 【完全版】
残された記憶
あの事故から、二ヵ月半が経とうとしている。
当たり前だけど、亜希はまだ大学に通えない。
退院してからは、ずっと家で過ごす生活を送っている。
今は休学の状態になってるけど、おばさんは早く大学にも通わせたいと言っていた。
大学は、前期の授業を終えようとしている。
授業の終わりに待ち合わせて、俺と良平は亜希の家に来ていた。
亜希が退屈してるから二人で遊びに来て、と、良平がおばさんに言われたという。
久しぶりに入った、亜希の部屋。
亜希の部屋は独特の雰囲気がある。
実用的だけど、遊び心を忘れていない。
そんな部屋だ。
亜希は記憶を失う前、輸入雑貨なんかを扱う店でバイトをしていた。
本店が渋谷にあって、店舗を多く構える店。
女の間では結構有名で、雑誌なんかにもよく掲載されるらしい。
その影響もあってか、亜希の部屋は全体的に明るい色を基調としている。
アメリカの子供が好きそうなカラフルな人形だったり、とにかくポップな感じの雑貨が多い。
真っ白なのドレッサーの前に、いつも使っていた巻髪用のコテが置いてあった。
あれ以来、亜希の髪はずっとストレートのままだ。
俺たちが来てから、亜希は部屋の中を落ち着きなく歩き回っている。
窓の外を眺めたり、鏡で自分の顔を見てみたり、次に何を始めるのか予想もつかない。
でも、何だか楽しそうにしている。
良平はというと、俺の斜め前であぐらをかきながら床に広げたファッション誌をペラペラめくっていた。
前に亜希が買ったと思われる雑誌。
紙面のモデルは、春の装いでポーズをきめていた。